夜の仕事のはなし。

「会いたいんだけど」と友人から連絡が来た。
平日の夕方のことだ。

駅前で私と友人は会った。
半年ぶりか。失踪してたから会えなかったのだ。何してんだこいつ。
髪が伸びたな、と思ったが私は特に指摘もせず(社交性がない)「どこに行くんだ」と聞いた。
看板だけ見る居酒屋に行こうとなり、私達はそのままそこへ来店、あっという間に席に付きアルコールを注文していた。

乾杯をしたあと、マドラーをかちんと床に置きながら友人は言う。濡れるなぁと私は見ていた。

「赤野さ、知らない男のちんこ、舐められる?」
「あっごめん。私の仕事先は副業禁止なんだよね」

仕事誘ってねえよバカと言われた。
ちんこの話をしたやつに叱られた。帰りたかった。

「いやそもそも男性器も触らないわよ…」

私はちんことは言えない初心であった。

「彼氏いないから」
「アンタそれでアラサー行ったらただの地雷女だからね」

確実に現状地雷女で突き進む友人に言われ、私は帰りたくなった。
いずれボンバーウーマンにでもなってこいつごと自爆したい。

「バイト探しててさ、接客で…18時に面接があって」
「どこで」

彼女は地区の名前を口にした。

「いかがわしい店メインストリートじゃねえか」
「キャバクラだと思ったらピンサロだった」

なろう小説のタイトルみたいな言い方をするな。

「お前募集要項ご覧になられないのか?」

風俗の店はキャスト側と客側両方を見ろと昔聞いた。
極端な例としては、キャスト募集要項には「本番無し」と書かれていても、客へ向けたメニューには「本番OK」と書かれている場合がある。
つまりホイホイ応募して「仕事内容が違った!」となりかねないのだ。まあどこも似たようなもんだけど。今の職場とかアットホーム(笑)だし。

「うーん、まさかちんこが出る店とは思わなくて」

というか、まだ静かな時間帯の居酒屋でこんな話するなよ。
その話はそこで終わり、私たちはさらにくだらない話をした。失踪していた時期の話を聞いた。何をしたら居候先から追い出されるんだと思った。

別れ際、友人は言った。

「知らない男がだめでも、わたしのならどうなの?」

どうもこうもねえよバカ。
お前が生やしたら考えてやるよ、と答えると「キモっ」と言われた。
納得行かないんだよな。